評価の実務ガイド

評価の問いからデータ収集計画へ

架空の地域活動研修を通し例に、評価の問い、指標、分母、測定時期、分析、倫理、担当を具体的な収集計画へつなぎます。

評価設計を、一枚にまとめる

問いを決めてから指標と収集方法を選び、担当と結果の使い道まで対応させます。 本文で詳しく読む

まず結論

「どの判断のために、誰のどの変化を、いつ、どう確かめるか」を一枚にまとめます。問いが決まってから、指標とデータ収集方法を選びます。 [1]

ここで扱う地域の見守り研修は架空の教材です。人数・割合・日程・判断条件は説明のための設定であり、標準的な効果や所要期間ではありません。

申込20人への研修から、4週間後の記録と次回の改善判断までを一つの例でつなぎます。

評価設計を一枚にまとめる

判断と問いから、記録、分析、倫理と担当までを対応させます。

1. 判断から評価の問いを決める

以下の団体・日程・人数・結果・判断基準はすべて架空です。 地域活動団体が「見守り活動の初回研修」を開きます。申込者20人へ90分の研修を提供し、4週間後に次の開催方法を決めます。研修の満足度だけでは、その判断に必要な情報が足りません。

評価目的、事業の成熟段階、変化が起きるまでの時間を確認します。開始直後なら、実施条件の改善が先に必要なこともあります。

誰が使う:運営責任者と現場担当者。当事者にも短い説明を返す。

何を決める:次回は同じ内容を継続するか、演習や参加後の支援を変えるか。

いつ使う:架空の判断日:2026年12月10日。報告の完成日をこの会議の前に置く。

大切な変化:参加者が安心して、決めた見守り手順を活動で使えること。

実務上の整理・提案
[2]

2. 問いと収集する記録を結ぶ

人数を数える問い、変化を確かめる問い、理由を理解する問いを、同じ表で扱います。KPIとして管理する指標でも、それが活動の量か、人に起きた変化かを記します。

この表は評価マトリクスの記入例です。方法を増やすときは、どの問いの不足を補うかを書きます。 聞き取りの対象選定、欠けた声、反対の事例も記録します。

架空例:問いから収集・分析・判断まで
問い / 指標の位置何を・誰から・いつ集めるどう確かめ、何に使う言える範囲
予定した人へ届いたか / アウトプット申込20人の参加・欠席記録。当日に担当者が記録。初参加か経験者かも任意で確認。参加人数÷申込人数。欠席理由を聞けた範囲で整理し、時間帯・案内を調整。参加した量を示す。参加者の行動変化は示さない。
手順を理解できたか / 短期アウトカム参加者へ研修前後に同じ条件の短い状況判断問題。照合用IDで同一人をつなぐ。対応が取れる人の前後と回答移行を確認。誤答が残る項目から演習を改善。この回答者の変化。練習効果や外部情報もあり、前後差だけでは研修の因果効果は確定しない。
活動で使えたか / 中期アウトカム申込20人へ4週間後に「決めた手順を使う機会・実施の有無・困りごと」を任意で尋ねる。行動実施、機会なし、未実施を分ける。分母と未回答を記録し、フォロー方法を決める。自己申告の実施状況。未回答者の実施状況や研修が原因かは別途確認が必要。
何が利用を助け/妨げたか / 理由と文脈希望者への聞き取り。実施・未実施・機会なし、初参加・経験者の声を意図的に探す。理由と例外を整理し、集計結果と並べて説明。演習・相談窓口の改善仮説にする。聞いた人の経験。少数の語りを全申込者の割合に換算しない。
実務上の整理・提案
[2] [1] [3]

3. 分母・欠測・分析を先に決める

回答が返る前に、誰を数えるかと、回答がない人の扱いを記します。未回答を「変化なし」と置くのも、分析から黙って落とすのも、結果の意味を変えます。

過去に受けた研修を、後から無作為割付にすることはできません。既存事業でも、これから行う追加施策や次回参加者の割付を設計できる場合はあります。比較群を設ける場合も、比較可能性と方法ごとの仮定が必要です。

  • 対象: 申込者20人。参加者18人と区別し、追跡は申込者全員へ案内する。
  • 行動の定義: 4週間以内に、定めた見守り手順を少なくとも1回使った自己申告。機会がなかった人を別区分にする。
  • 集計: 回答者の内訳に加え、20人全体の回答有無と参加有無を示す。経験別の差は人数を併記する。
  • 前後: IDで対応が取れる回答だけを比べ、対応できなかった人数と理由を記す。匿名の別々の集団平均を個人の変化にしない。
  • 因果の問い: 研修の効果を推定したい場合は、新規参加者の割付・比較条件・介入前の記録を実施前に専門家と検討する。
実務上の整理・提案
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4. 倫理と担当を確認する

調査への参加、研修への参加、結果の公表を区別します。回答を断る、答えにくい質問を飛ばす、途中で中止することに不利益がないと説明します。録音や個人が分かる引用は利用範囲を別に確認します。

「3か月」はこの架空例の合意です。共通の法定期間や推奨標準ではありません。実際の保管方針・契約・必要性に合わせて決めます。

架空例:実施前に合意する運用
作業担当と時期確認すること
案内・同意現場担当 / 募集時と調査時目的、任意性、利用範囲、問い合わせ先を説明。サービス提供と回答を切り離す。
照合・保管記録担当 / 収集時氏名対応表と回答を分け、アクセス担当を限定。架空の保存期限は会議後3か月として、合意した削除方法を記録する。
集計・説明評価担当 / 判断会議の前分母、欠測、測定方法、例外、特定につながる小集団の表現を点検する。
変更・返却運営責任者 / 判断会議の後変える内容、担当、期限、確認記録を決め、当事者にも返す。
実務上の整理・提案
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5. 自分の計画に移す

最初は大切な問いを1〜3個に絞り、上の表の各行を自分の事業に置き換えます。空欄が残るところが、次に確認する情報です。問い、利用者、判断期限が変わったら、収集計画も見直します。

評価の問い・指標・データ源を自分の言葉で記録し、確認が必要な前提を残します。

実務上の整理・提案
[1]
仮想例・実績ではありません

収集する記録を判断用途までつなぐ

説明用の架空例です。申込20人の見守り研修を、次回の演習と支援の判断に使います。

問い不足すると困る情報次の確認
参加後に手順を使えたか回答者の実施だけでは未回答者や機会のない人が見えない対象20人、回答15人など分母を分け、機会なしと未実施を別区分にする
なぜ使いにくかったか回答者だけの印象では欠けた声が分からない実施・未実施・機会なしの異なる声を探し、対象選定と例外を記録する
追加演習が役立つか過去の参加を事後に無作為割付へ変更できない次回の比較条件・割付・主要指標を実施前に検討する

この例から判断できること

問いごとに集める記録と判断用途が結び付けば、不要な調査を増やさず、説明できる範囲も先に示せます。

判断で間違えやすいこと

参加者数をそのまま成果として扱う

見直し方: 参加量と、理解・行動などの変化の指標を分けて記す

理由: 参加は活動の提供状況であり、参加者に起きた変化とは役割が異なるためです。

事業終了後にRCTで過去の効果を確かめる計画にする

見直し方: 今後の新規割付ができるかを確認し、過去のデータは条件に合う別の設計で検討する

理由: 過去の介入を後から無作為割付に変更できないためです。

次に手を動かす

評価マトリクスに問い・指標・データ源・測定時期・分析・主張限界を記入する

よくある質問

前後を比べれば事業の効果が分かりますか?

対象者の観測された変化は確認できますが、他の要因もあり、前後差だけで事業の因果効果を確定しません。比較条件と方法の前提を別途設計します。

未回答者を集計から外してよいですか?

回答者の集計はできますが、その分母、対象者全体の人数、未回答者の数と偏りを示します。回答者だけの割合を全体の割合としません。

参照資料と確認箇所

  1. Choose methods and processes
    BetterEvaluation / Global Evaluation Initiative
    参照箇所
    2: types of key evaluation questions / 3: situation / 5–6: complementary methods and evaluation matrix / 7–9: feasibility, review, revision
    本文との対応
    記述・因果・価値判断・行動の問いを分け、問いを中心に複数方法、実行可能性、設計のレビューを組む。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  2. CDC Program Evaluation Framework, 2024
    Centers for Disease Control and Prevention (CDC), MMWR
    参照箇所
    Types of Evaluation / Step 1: evaluability assessment / Step 2: program roadmap / Step 4: Indicators and data sources / Step 6: Act on findings
    本文との対応
    文脈から行動までの6段階と、協働・公平性・学習利用を横断的に扱う。指標は活動にもアウトカムにも置ける。アウトカムの確認だけでは因果を帰属できない。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  3. Quality in qualitative evaluation (QQE)
    HM Treasury / Evaluation Task Force
    参照箇所
    §4.2: guiding principles / Framework questions 4, 7–8, 12: inference, sample coverage, diversity
    本文との対応
    質的評価の主張には分析過程、事例選定、異なる声、より広い推論の根拠と限界を示す。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  4. Magenta Book: Central Government guidance on evaluation
    HM Treasury / Evaluation Task Force
    参照箇所
    §1.6 pp.23–24: early planning / §2.2: evaluation scoping / §3.2–3.5 pp.71–84: method choice and causal approaches / §6.2 pp.144–145: use and dissemination
    本文との対応
    評価設計を事業設計に早く組み込み、問いと利用目的に見合う方法を選ぶ。影響評価は変化の確認と因果寄与を区別する。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  5. Magenta Book Annex A: Analytical methods for use within an evaluation
    HM Treasury / Evaluation Task Force
    参照箇所
    A2.1 RCT pp.20–21 / A2.7 Difference-in-difference pp.29–30 / A5.4 Output or performance monitoring p.54
    本文との対応
    RCTの実施条件、DiDの事前推移と比較条件、モニタリングで把握できる実施と変化を扱う。
    資料確認日: (AI照合を含む)
  6. UNEG Ethical Guidelines for Evaluation
    United Nations Evaluation Group (UNEG); official copy hosted by UNODC
    参照箇所
    pp.7–10: integrity, accountability, respect, beneficence / pp.20–22: conduct, consent, confidentiality, power / Annex 3 pp.30–35: phase checklists
    本文との対応
    誠実性・説明責任・尊重・善行を全段階に適用し、同意、撤回、守秘の範囲、害の軽減を具体化する。
    資料確認日: (AI照合を含む)
内容更新: 資料確認日: (AI照合を含む)人の監修記録なし説明用の仮想例あり編集方針・確認範囲このページを引用訂正したい箇所を伝える

このページの引用情報

評価コンパス編集.「評価の問いからデータ収集計画へ」. 評価コンパス, 2026-10-07更新. https://evalcompass.jun-nakatani.com/guides/evaluation-design-brief/
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更新履歴
  • — 公式一次資料に対応づけた架空の地域活動研修の通し例を追加。分母・欠測・因果の範囲と、改善判断の担当・期限を具体化。